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白い地はフェライト,黒い細い線は結晶粒界,小さい黒点は介在物または、それが研摩時に抜け落ちてできた跡.
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倍 率 ×100
腐食液 3%ナイタル(約12s)
組 成 C 0.02%,Si 0.24%,Mn 0.22%,P 0.005%,S 0.017%
熱処理 950℃×1h 空冷(焼ならし)
硬 さ 40〜70 HB
引張強さ 216〜314 MPa
伸 び 40〜50 %
解 説
フェライトとは純鉄に微量の炭素を固溶したα相の鉄をいう.炭素の最大固溶量は常温で0.008%である.原子配列は体心立方格子で,770℃以下では強磁性体である.
本標準片を検鏡すると,炭素がα相に溶け込んだフェライトの結晶粒とその粒界とが見える.粒界には不純物が集まり易く,また,結晶格子の乱れのため腐食され易く,黒く見える.組織中の黒点は介在物か,またはそれが研摩中にとれて出来た跡(ピット)である.結晶粒子間で色に僅かの差異があるのは,結晶方位の違いにより腐食面の表面状態が異なることによる.
フェライトはオーステナイト領域から急冷してもこの領域での炭素固溶量が少ないので硬化しない.硬化は冷間加工によって起こる.その加工により結晶粒は容易に加工方向に沿って変形する.
冷間加工で硬化するのは格子ひずみによるものであって,硬化した鋼は焼なましをすると,再結晶して軟化する.一般に再結晶による結晶粒の成長は冷間加工度と加熱温度,加熱時間とに関係する.図1.1は軟鋼の例で,結晶粒の大きさに及ぼす加工度,加熱温度との関係を示す.この図によれば加工度8〜10%,加熱温度600〜800℃のとき結晶粒の粗大化が著しい.